B2Bマーケティングでも、最近は話にあがることが多くなったKPI、KGI。2012年頃に米国のB2Bマーケティング分野のリサーチ・アドバイザリーであるSirius Decision社がDemand Waterfallという売上獲得までのリード・マネジメントのフレームワークを打ち出しました。そして、B2B分野でもMAやSFAにおけるテクノロジーの進化を通じて、リード管理プロセスの実装が可能となったことで、B2Bでも一気にデマンド・ジェネレーション分野でのKPI、KGIの定着が進んだように感じます。
マーケティングのKPI、KGIに関する書籍はB2C分野でのウェブ解析が中心で、B2Bマーケで参照になりそうなものは少なく、今回はこれに役立ちそうな書籍として『マーケティングのKPI「売れるしくみの新評価軸』 を手にとってみたので、早速、紹介しましょう。
■リードマネジメントの易しい概念解説と網羅的なKPIの紹介
本書の前半では、一例として、イベント出展における一般的な指標として、名刺獲得数⇒コールドコールの実施⇒訪問許可⇒見積提示⇒受注といった流れを説明し、基本的なKPI、KGIの考え方を解説しています。併せて、リードとは何か?リードに含まれるべき情報は何か?売上創出を目的にしたリードマネジメントモデルといった概念的な解説がされています。
後半では、 P.131でDemand Waterfallの紹介がされ、リードマネジメントの各ステージ間でのコンバージョン系のKPIが整理されるとともに、ターゲット網羅率(保有ターゲットリード数 ÷ 市場ターゲットリード数)といったアクセサブルマーケット対自社のカバレージ的なKPIも網羅的に紹介されています。そして、リードの状態・属性に応じたセグメンテーションに即したマーケティング活動の展開といったSTP的なアプローチも紹介されています。
個人的な感想として、国内の書籍で最も網羅的にB2BリードマネジメントのKPIをまとめられている良書です。昨今、MA導入というツール先行の風潮がある中、そもそも、自社のリードマネジメントの机上整理が必要なわけです。B2Bマーケターであれば、この書籍に出てくる概念、KPIは抑えながら、自社のリードマネジメントのあるべき像をまずは整理すべきでしょう。
一点、残念なのはこの書籍のタイトル設定。新評価軸かといわれると本書の発売が2017年で、Demand Waterfallの概念は2012年からの既知。本書は、マーケティング活動による売上貢献(目的)とリードマネジメントプロセスの実装(手段)に着目している為、タイトルにリードマネジメントを最適化、KPIでのPDCA的なキーワードは入れた方が良いように感じます。
■で、PDCAの頻度はどうする問題
本書のように、KPIの幅だしをすると、結構な種類に渡ります。大別すれば、日々のキャンペーン活動のパフォーマンスを確認する系、そして、自社のリード保有率・カバー率を整理する系、でしょうか。で、本書にはどれぐらいの頻度これをレビューすべきかの解説はありません。ここは自分で整理ですね。
私の現職では、リードマネジメント関連のダッシュボードを整備済みで、日次で最新の情報が参照できます。といっても週次でキャンペーン系のパフォーマンスとして、案件の創出状況を確認します。大型のキャンペーンの進捗は個別に見ますが。また、リードのデータベースの変化は3か月に一回ぐらいでしょうか。
その意味で、トラッキングするKPIの選択はPDCAの始まりにしか過ぎず、これらのKPIを誰が、どのような頻度、どのようなタイミングで、そして、どのようなレポーティングで確認するかも併せて考えておくべきでしょう。
■まとめ これからB2Bのデマンドセンター化に着手する方に最適な入門書
自社のリードマネジメントプロセスを見直したい、KPIを設定したい、MAをこれから導入するという方には、最適な入門書です。本書を用いて、自社のリードマネジメントプロセスとKPIを整理しましょう。
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