Account-based marketing(ABM)を取り組むにあたり、まず考えるべきことは何でしょうか?
■そもそも、アカウントベースド・マーケティングとは?定義を正しく理解する
ABMに関する誤解の1つとして、自社の既存顧客ではない、見込み客のリード獲得までをスコープと捉えているケースです。例えば、自社のターゲットセグメント内の企業名をリストアップし、数十社、数百社に関して、リレーションシップの最初のステップとしてリード獲得を行うといったケースについて、ABMと称しているケースです。
とある米国のB2Bマーケ会社が提供するABMのeLearningを受講したことがありますが、ABMは顧客独自のInsightを軸にした1 to 1 での営業、マーケティング活動を前提にしています。また、よく言われることとして、1 to 1のABMで開始し、その後、1 つのプログラムを複数の顧客に展開していくと言う前提ですが、ABMの目的は売上の最大化であり、リード獲得のみをスコープとしている訳ではありません。
ABMは大変にマーケティング部門のリソースを消耗する点から、対象アカウントの選定に際して、売上実績、もしくは今後の売上ポテンシャルをパレートで見ていき、選定することになります。パレートの一般的な法則の例ですと、売上高の80%を優良な20%の顧客が占める、といったことは聞かれたことがあるかもしれませんが、自社に売上トップ数社、10数社でどれぐらいの売上比率が期待できるのか、マーケティング部門のリソースの何パーセントを当てるのか、というトレードオフ的な視点で整理することになります。数値化すると、明確になりますが、売上トップ5社の全社売上比率が5%とした場合に、マーケティングのリソースの20%を当てるべきか?といった売上戦略とリソース投入の取捨選択です。
仮に、ABMの対象アカウントが選定された場合、営業はアカウントプランを作成し、営業とマーケティングにて、ターゲットアカウントに対する1オン1でのマーケティング、営業活動の骨子を策定することになります。そして、アカウントプランと連動して、ABMの活動の計画、進捗、結果レビューを行うことになります。
ABMには、マーケティング側は多くのリソースを取られることになります。マーケ部門のKGI、KPIに対して、ABMに投入するリソースと獲得できる成果のバランスが不均衡な場合、具体的にはマーケリソースの投資の割にリターンが少ない場合、ABMに突入するが戦略上正しいのか、留意が必要です。
成熟した市場、売上を構成する顧客の構成に大きな変化がない、大手顧客の売上確保、売上伸長が会社の命題である場合にABMは向きますが、一方で、市場参入時や成長段階において、一定規模の大手顧客の顧客獲得を手広いマーケティング活動でカバーしたい場合、繰り返しになりますが、ABMが向いているとは言えません。
そのような場合、次のようなアプローチを考えていく方が良いでしょう。
■ABM以前の段階として、まずはターゲットセグメント内のアカウントを3つに分けて考えてみましょう。
SFAやMAを導入済みの企業であれば、各企業ごとのリード(キャンペーンでリーチできる顧客DMUの担当者)、および、パイプライン状況の可視化ができます。
リード、パイプラインのボリュームにより、顧客の段階について、3つのグループわけをしてみましょう。例えば、各営業の販売目標を元にリード保有企業の目標数、次年度のパイプライン目標について、ざっくり仮定します。例えば、営業テリトリー企業のうち、何割について、パイプライン保有企業があり、さらに、その先行指標として、テリトリー企業のうち何割においてリード獲得ができているか。
このような現状確認により、リード獲得、リード育成・案件化、パイプラインの受注貢献とのギャップ、すなわち、今後の注力比重を仮説立てできます。
●リードも、パイプラインも不足しているアカウント・セグメント
→リード獲得施策が必要。マーケ活動のKPIは本セグメント企業での新規リード獲得数
(施策例)対象企業向けのテレマでリード獲得できないか?
●リードはあるけど、パイプラインが不足しているアカウント・セグメント
→獲得したリードからの案件コンバージョン施策が必要。マーケ活動のKPIはパイプ創出
(施策例)対象企業に合致した事例セミナーを開催できないか?
●リードもあるし、パイプラインも十分にあるアカウント・セグメント
→パイプラインを受注率を上げる施策が必要。マーケ活動のKPIはパイプラインへのインフルエンス
(施策例)検討顧客と既存顧客のミートアップを開催できないか?
●既に売上があり、リテンション段階に入ったアカウント・セグメント
→顧客企業の中での導入部門、対象者を拡大する必要あり。既存顧客の維持率、売上拡大へのインフレエンス
(施策例)顧客内での製品・サービス導入利用のユーザ育成できないか?
これはABMではなく、ターゲットアカウント、ターゲットセグメントベースでのマーケティングとなります。自社の顧客獲得、売上構成のフェーズに応じて、どちらのアプローチを意識するか、考えていきましょう。