昔、インサイドセールスの管理職が、営業が案件追ってくれない事象について、”母親が丹精込めた晩ごはんを息子が食べない”と揶揄する場面に出くわして、ジーンときてしまったことがある筆者です。日本でも、マーケティングでMQL(リード)を作成し、インサイドセールスで精査し、フィールドセールスにSQL(営業案件)をパスするモデルへの理解と定着が進んできています。ですが、どの会社でも起きる問題として、営業が案件を追いかけてくれないという問題があるのですが、今回はその対策の基本を説明します。
■商談サイクルが長期なBtoBで見逃しやすいSQLフォローアップ問題
BtoBマーケティングでのデマンド・ジェネレーションを始めたばかりの頃、展示会、ウェブで多くのリードを作成でき、リード単価視点でのパフォーマンス良くて、楽しく仕事が進むわけです。ですが、ある日、気づいてしまうわけです、結局、リードから売上上がってこないことに。商談サイクルが短い場合、この気付きは早いわけですが、企業向けの場合では商談サイクルが半年から1年が平均的とも思え、マーケティング立ち上げて、1年後に売上が上がってこないということになるわけです。
売上が上がってこないと、そこから個別の営業にヒアリングに行ったりするわけですが、いろんな意見がでてくるわけです。
・すぐに案件化しないリードが多く、リードの質が悪い。
・忙しくて、マーケティングのリードの対応まで手が回らない。
・マーケのリードはアポ取りを期待していて、案件化までは考えていない。
ですが、これらも部分的、定性的な情報ですので、課題のパターンと定量感がないと対策にも当たれませんし、この対策を年に1回といった頻度で回していてはPDCAができません。
ですが、おぼろげながら、問題の原因として、マーケティングのリードの質と営業の期待値との乖離→営業の対応優先順位(営業案件とマーケ案件)といった点というあたりはつけられるわけです。
■まずはマーケティングリードの定義とSLAを明文化
業務が標準化(脱個人化)が進んでいる外資系企業において、マーケティングリードの定義、SLAが営業の末端まで定着しているケースが稀でした。例えば、欧米と日本のビジネス習慣の違いとして、欧米では営業ノルマの3-5倍のパイプラインが必要とされるが、日本は2倍程度が慣行になったいたりしますので、案件登録を積極的な行わないことがありました。また、欧米と比較して、デマンドジェンに関する考え方が認知されていない背景もあります。
ですので、やはり、外資系であれば、日本の営業の為の、そして、スタートアップであれば、自社の営業の為のマーケティングリードの定義と営業フォローのSLAの定義と定着が必要になります。
●マーケティングリード(MQL)の定義:
BANT、Budget、Authority、Needs、Timeを軸に、営業の期待値と認識合わせを行います。案件金額や企業規模の足切りの設定、および、Budget以外の単体要素で案件化するか、といった認識合わせを行います。もしくは、アポベースという考えもあります。
●リードフォローアップのSLA定義
マーケティングから営業へのリード引き渡しを行って、どの程度の期間で何を行うか、のお約束ごとです。リード引き渡し後、3日以内に電話で連絡する、1ヶ月以内で訪問するといった時間軸とアクションのSLAになります。併せて、どのアクション後に案件化を判断するかの定義も必要です。具体的には、SQL化の可否は、電話後か、訪問後か、といった定義です。
■デマンドジェンの進捗会議で部門間連携強化
折角、SLAを定義しても、それが遵守されているか、定着をトラックする必要があります。仮に機能していない営業部員がいたとしても、それを指導・管理できるのはマーケティング部門ではなく、営業部門長なわけですから、部門長への情報共有を工夫する必要があります。
そこで、月次ぐらいで、マーケティング部門長と営業部門長でデマンドジェン対策会議を行うことを個人的にはオススメします。そこでは、単にフォローアップSLAの状況を報告するのみでなく、マーケティングの貢献状況を可視化して、お伝えするようにバランスを取ります。
・マーケティングリードの提供数
・リード提供元となった主要なキャンペーンの結果
・リードのSQL化状況、および、フォローアップSLAの遵守状況
・マーケティング貢献:創出案件金額、および、売上貢献金額
これらの定例的な情報共有に追加して、是非、協議したいのが、営業の期待値の吸い上げです。例えば、マーケティングリードの提供が特定の営業メンバー、業種に偏っている場合、リード数を伸ばすべき部門・業種が何かを確認する、といったケースがありました。営業のGTMを軸に、マーケティングの注力してほしい商材、ターゲット企業の期待値を整理する場としても、活用できます。
これを月次で行うことにより、軌道修正が早くなり、営業の期待する分野での施策を翌月までに考えるといった癖がマーケティング部門内に浸透させやすいです。