PR活動の施策のひとつとして、メディア・キャラバンという打ち手があります。昨今、PR配信プラットフォームを活用して、Broad、Push、高い頻度でプレスっぽいものを打つという手法が見られるますが、これとの対比で、One on One、PullなPR戦術・施策としてのメディア・キャラバンという打ち手を簡単にご紹介します。
■PR施策をPush vs Pullで考えてみる
王道的なPR施策として、プレスリリース配信があります。新製品・サービスの発売開始、業界にインパクトのある導入実績・事例、または調査・レポートについて、プレスリリースを配信する、さらには、プレスリリースと併せて記者会見を行うことがありますね。
従来であれば、日頃からリレーションを構築しているメディアの記者にプレスリリースをメールしたりするのが一般的だったと思いますが、最近では、プレスリリース配信を行うプラットフォームが整備され、メディアリストもなしに配信が始められたりと、ハードルは下がっています。一方で、これだけハードルが下がると、セミナー開催、ダウンロード資料のリリースについて、毎週の様にプレス配信する会社もあるようです。
特に配信プラットフォームによるプレスリリース発信は、言ってみれば、コンテンツをBroadにPushする手法です。それゆえ、メディア、記者からの視点からすると、配信されたはずのコンテンツも埋もれがちですし、そもそも、自社の業界における位置づけがきちんと理解されていないと、何を言っているか以前に、誰がそれを言っているか、という観点でまったくAttractできないまま終わることになります。
このようなBroadでPushなPR施策との対比として、One on One でPullなPR施策として考えられるのがメディア・キャラバンです。
■攻めるPR戦術 メディア・キャラバン
キャラバンの意味をググると、” 砂漠地方などを、らくだに荷を積み、隊を組んで行く商人の一団。隊商。”、そこから派生したのでしょう” 調査・販売・宣伝などのために、一団を組んで、遠征・巡行すること。また、その一団。”という説明があったりします。
メディア・キャラバンの場合、なんらかのプレスっぽいコンテンツ(新製品、新事業戦略など)をネタに、複数のメディアにOne on One のミーティングをお願いしてまわります。ですが、これは必ずしも、プレスっぽいコンテンツの記事化をメディア記者に期待する姿勢で臨むわけでなく、これらのコンテンツと併せて、自社の会社紹介、事業、さらには顧客ニーズといった背景について説明するとともに、メディア記者の関心事、すなわち、記事化したコンテンツのニーズを情報交換していきます。キャラバンですので、PR担当者だけでなく、コンテンツ(新製品や事業戦略)を専門的に解説できるメンバーと一緒に、まさに一団となって、メディアを訪問します。
つまり、メディア・キャラバンは、自社を知ってもらいつつ、記者からこの会社であれば、このような取材ができそうという引き出しを考えてもらう機会になります。実際、個人的な経験として、メディア・キャラバンを実施し、記者の方から”このような取り組みをしている顧客企業があれば、インタビューしたい”というご要望を頂き、導入企業のインタビュー記事化という成果を得た経験もあります。
■メディア・キャラバンの最終形としての記者懇親会
先述の通り、プレスリリース、記者会見は一方的な情報提供に近い(もちろん、記者会見で質疑応答、個別取材もしますが)、これとの対比としてのメディア・キャラバンによるOne on One でのPullに記事化のネタを記者から引き出すわけですが、後者をもっと複数のメディア、記者と実施する手法のひとつとして、記者懇親会を自社でホストする方法があります。
記者懇親会では、自社の事業の取り組みをご紹介しつつ、自社の事業運営に関わる関係者を同席させます。これにより、記者の方は、外資系企業であれば、自社のカントリーマネージャー、営業部門、マーケティング部門といった複数の方と懇親会を通して、情報交換を行うことができます。
■最後に メディアの記事化ニーズを把握しよう
自社の一方的なプレスリリースの配信だけで、メディアからの取材依頼が来ない場合、メディアの関心事と自社のコンテンツがずれている場合があります。もしくは、同じようなコンテンツを配信しても、競合が取り上げられ、自社が取り上げられない場合、そもそも自社の会社としての認知が不足している場合があります。
これらを補完するために、メディア・キャラバンを通じて、自社を深く知ってもらう、そして、記者の記事化のアンテナの範囲を理解していく、という基本から考えてみるのも一手です。